パナソニック株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部は、これまでに開発してきた植物由来のセルロースファイバーを高濃度に樹脂に混ぜ込む技術を、植物由来の樹脂(バイオポリエチレン)へ展開し、バイオマス度[1]90%以上の成形材料[2]を開発しました。軟らかいバイオポリエチレンにセルロースファイバーを高濃度添加することで、従来kinari※1と同等強度の実現、また白色材料として開発することにも成功しました。
昨今の海洋プラスチック問題や石油資源の枯渇・地球温暖化といった環境問題から、天然資源の効率的な利用(SDGsゴール12)や、海洋汚染の防止および大幅な削減(SDGsゴール14)が国連の開発目標として定められ、樹脂量の削減が世界的に求められています。当社としても、2017年に「環境ビジョン2050」を策定し、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向けた開発活動を進めております。
当社は、2015年から石油由来の樹脂量を減らす研究開発活動を開始、2019年に天然由来成分であるセルロースファイバーを55%濃度で※2、2021年には70%濃度(バイオマス度70%)で樹脂に混ぜ込む複合加工技術を開発しました※3。さらにバイオマス度を高めるため、石油由来樹脂(ポリプロピレン)を植物由来樹脂に置き換える開発を進め※4、サトウキビの搾りかすである廃糖蜜から作られるバイオポリエチレン(バイオマス度90%以上)に着目しました。しかし、バイオポリエチレンはポリプロピレンの約半分の強度であり、セルロースファイバーを混ぜ込むだけでは強度物性が低く、展開先が限られました。そのため、適正な添加剤を加えることにより、成形材料としてバイオマス度90%以上で、ポリプロピレンを用いたkinariと同等の強度物性を達成しました。また、これまでのkinari同様、着色自由性が高い白色の樹脂ペレット化に成功、成形時に素材そのものを褐色化させることも可能で、木質感などの高いデザイン性も実現できます。
今後、高濃度セルロースファイバー成形材料の特徴と優位性を活かし、家電筐体や車載機構部材、高強度とデザイン性を活かした大物家電外装や美容家電、服飾衣料品や日用品、また飲料・食品容器等への展開を進めてまいります。同時に、さらなるバイオマス度の向上、材料特性や素材優位性をさらに高めることで幅広い商品への展開を加速し、樹脂使用量の低減を通して持続可能社会の実現に向けた企業活動を推進してまいります。
【特長】
1. バイオマス度90%以上の高濃度セルロースファイバー成形材料を開発
2. 従来kinariと同等の強度物性を達成
3. 主成分が天然由来成分となり、樹脂使用量を削減できることで地球環境へ貢献
※1:パナソニック株式会社プレスリリース
2021年12月1日 高濃度セルロースファイバー成形材料『kinari』のサンプル販売開始
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/12/jn211201-2/jn211201-2.html
※2:パナソニック株式会社プレスリリース
2019年7月8日 高いデザイン性を実現する高濃度セルロースファイバー成形材料を開発
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2019/07/jn190708-1/jn190708-1.html
※3:パナソニック株式会社プレスリリース
2021年2月4日 70%高濃度セルロースファイバー成形材料を開発
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/02/jn210204-1/jn210204-1.html
※4:本開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(JPNP20009)の成果を 一部活用しています。
【用途】家電筐体、車載構造部材、日用品、飲料・食品容器など
【特許】国内23件 海外33件
【用語解説】
[1]バイオマス度:材料に含まれる植物・生物由来の原料(バイオマス原料)の割合のことをいいます。
[2]成形:材料を溶かして、金型に流し込むことで、製品の形に加工することをいいます。成形することができる材料を成形材料といいます。
【プレスリリース】
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2022/03/jn220318-2/jn220318-2.html
公開日:2022年3月18日